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「国民国家の誕生」と「国民国家化」

  • 執筆者の写真: 四々縦七
    四々縦七
  • 2021年12月4日
  • 読了時間: 3分

国民国家とはなにか? 


国家とは『財産ないし共有財産』であり、国民とは『国家という共有財産の所有者として設定された観念』であると定義できた。したがって、国民国家とは、『国民が国家すなわち領土などの共有財産を所有するという建前の政治形態の国』と定義できた。


では、国民国家はどのようにできるのか?


まず、アメリカ🇺🇸・フランス🇫🇷・ハイチ共和国🇭🇹・パラグアイ共和国🇵🇾・チリ共和国🇨🇱などは革命戦争に勝利して国民国家を造った。狭義の「国民国家の誕生」パターンだ。革命戦争を経て、『国民が国家すなわち領土などの共有財産を所有するという建前』を体現する安定した政権を持つに至ったケースである。


一方、イギリス🇬🇧・ロシア🇷🇺・スウェーデン🇸🇪などは決定的な敗戦を経験せずに、ある程度の時間的な幅を持って「国民国家化」を成し遂げるパターンだ。ここで言う国民国家化とは、『現代世界史すなわち国民国家のサバイバル・ゲームにおいて自覚的に独立を保ち続けること。また、そのための外交・戦争・産業振興・創意・工夫・努力など』と定義できる。『外国に侵略されたら領土も財産もあらゆるものが奪われるという現実』が、『国民が国家すなわち領土などの共有財産を所有するという建前』に優先するケースである。国の大枠が維持されたまま現代世界史を迎えることができるので政権の安定は保たれやすく、国の独立維持のための国民軍形成および他国との戦争が結果的に上記『建前』と重なる。


第三に、植民地・併合地域・保護国・衛星国などの他国に従属する立場から独立を回復するパターンがある。国の崩壊・滅亡、決定的な敗戦、他国による占領・統治などの『外国に侵略されたら領土も財産もあらゆるものが奪われるという現実』を経て独立を回復すると、『現代世界史すなわち国民国家のサバイバル・ゲームにおいて独立を保ち続けるにはどうすべきか?』という「国民国家化」の意識が生まれるのだ。ネーデルラント🇳🇱や永世中立国という選択をしたスイス🇨🇭はここに含まれる。そして、サルデーニャ王国(サヴォイア家、後のイタリア王国)🇮🇹やプロシア王国(ホーエンツォレルン家、後のドイツ第二帝国)🇩🇪も、ウィーン議定書(1815年6月9日)による旧領回復+αで、このパターンを歩むことになる。


スペインから独立したアメリカ諸国の場合、複数で集まってスペイン副王領からの独立を達成するけど、すぐに仲違いしてバラけてしまう。安定政権は実現できていない場合も多いのだが、バラけたタイミングを広義の「国民国家の誕生」とみなすべき第四のパターンだ。スペイン副王領ヌエバ・グラナダから大コロンビアとして独立したものの崩壊して誕生したベネズエラ🇻🇪・エクアドル🇪🇨・ヌエバ・グラナダ共和国(コロンビア)🇨🇴や、メキシコ革命を成功させてスペイン副王領ヌエバ・エスパーニャからメキシコ第一帝政として独立したものの1年ももたずに崩壊してメキシコ合衆国🇲🇽と中央アメリカ連邦共和国に分かれ、中央アメリカ連邦共和国もすぐに崩壊して誕生したニカラグア🇳🇮・ホンジュラス🇭🇳・コスタリカ🇨🇷・エルサルバドル🇸🇻・グアテマラ🇬🇹が、このパターンの例だ。

参照文献:岡田英弘「歴史とはなにか」文春新書

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